支部一番の人気者
2017/11/18

それまで平凡だったところが劇的に変化するときがあります
ある日の事、首都圏方面から新しい支部長が赴任されました。
いつものように支部に行くと、一人の男がニコニコしながら玄関前に立っているではありませんか
その男は、なぜか自分の方を見ているようなので、うしろに誰かいるのかな
と、思いましたが誰もいませんでした。
さらに近づくと、その男は両手を前に差し出したのです。
思わず自分は反射的に右手を前に出してしまいました。
男は温かい両手で自分の手を握ると、満面の笑みで「いや〜ようこそいらっしゃいました」
そのように言われたのです。
ビックリしました。
男はそのように支部に集う一人一人に両手で丁寧に握手したのです。
顔をこわばらせていた人や、人の影に隠れる人の多くいるぎこちない雰囲気だったところが
次第に和やかな場に変化していきました
死んだ魚の目のような瞳が次第にキラキラと輝き始め、
いつの間にかその支部は笑顔満開の場に変わっていったのです。
男の第一声スピーチはこの様に語られました。
「皆さん、お早うございます。今度こちらに赴任しました支部長の銅鑼衣紋(仮名)と申します。
私はこの支部を皆様と共にユートピアにしたいと思います。
今、皆様の前には二つの道があります。一方の右側の道は険しく細い道で上り坂です。
また、もう一方の左の道は舗装されてて道幅も広く緩やかな下り坂です。さて、
皆さんはどちらの道を選ばれるでしょうか。
実を言いますと地獄へと通じる道は善意で舗装されているのです。
天国へ通じる道は険しいのです。そこには茨があって大変です。イバラの道です。
そのイバラの道を仏法真理を学びながら歩んでまいりましょう」
真面目な話しばかりではありませんでした。
男は次々と冗談を連発しながら支部に集う人たちの頑固な心を柔らかくしていったのです。
その後このように語られました。
「私たちの進む方向には道標もありません。
しかし、私たちは後の時代の人々に、後から続く人々に道標を立てていこうではありませんか。
皆さんには苦しみや悲しみ悩みがありますか?
苦悩や悲しみがあるということは、私たちに選択をせまっているんですね。
選択とは何か。それは私たちひとりひとりが与える側の人生を選ぶか、
与えられる側の人生を選ぶか。その選択なんですね。
愛の本質とは、まず、与えることなんです。
私たちは与える側の人生を選ぼうではありませんか。
具体的に言うならば、理想の支部をつくること。全国の人が参考になるような支部をつくること。
全国の模範となるような支部をつくりましょう!」
その支部に集う人達のわくわく感は日を追うごとに増えていきました。
人気者になった支部長は、自らの発した言葉の本質を、まず己自身が実践してみせたのです。
それは、支部に集う一人一人に暖かく愛念を送り、一人一人を歓迎したのでありました。
偉い人であろうとなかろうと初めて会う人であろうとなかろうとに関わらず、
全ての人にこぼれるばかりの笑顔で握手をしてあげたのです。
最初は戸惑っていた人も、次第に握手が楽しみになっていきました。
やがて数ヶ月が過ぎた頃、ある月の七の日感謝祭で突然、男は奇妙なことを言い出しました。
「皆さんを祝福したいんです」
そう言うと男は目標達成者の一人一人に真っ赤なバラの花を手渡しました。
「おめでとう!おめでとう!」と言いながら優しく手渡しました。
小さな成果でも、大きな成果でも変わりなく花を手渡したのです。
突然のプレゼントに皆は、はもじもじしながら受け取りました。
みんなの瞳からは熱いものがこぼれ落ちました。
そして、みんなの関心は、ある人に集中したのです。
「あの女性は未だ目標達成になっていないけどどうするんだろう」
支部長はその女性にも皆と変わらずに赤いバラを嬉しそうに手渡しました。
女性はおずおずと受け取りました。その時、皆一斉に拍手しました。
支部長の情熱は冷めやらずその熱弁は毎日行われました。
「みなさんの強みはいったい何かご存じですか?
皆さんには全国に誇れる素質が備わっています。
私から見たらその素質とはピュアな心です。その強みを生かし日本一を目指したいと思います。
では何で日本一になるか・・・それは感謝です。
感謝する心が良きものを引き寄せてきます。
それにはまず与えられていることに気づくことから始まります。
この古くなった仮支部であっても雨風を防いでくれているではありませんか。
みなさんの周りにいる縁ある友人・知人の方はどうですか?一人一人良きところがありますね。
他人の良きところは自分の先生ですよ。私たちには、必用なものは全て与えられていますよ。
先ず与えられていることに気づくこと。気づくと感謝の心が芽生えが、今度は与えたくなりますね。
与えたくなったら自分の周りから感謝のお返しをしていくこと。そうすると善の循環が始まります。
良きことがつぎつぎと起こってきます。
どうですか?まずは感謝で日本一!。
感謝で日本一なら成し遂げられると思います。みなさんこの支部、感謝で日本一にしましょう!!」
この話を聞き、支部に集う誰かが言い出した。
「なるほど感謝で日本一か。感謝で日本一だったら俺たちにも出来そうだな」
そう言うとまた一人「そうだ!その通りだ!やろうぜ!」
みんなの気持ちも同じでした。
その瞳はダイアモンドに変わっていったのです。
そして第一の奇跡がおきました。それは、一人一人に使命感が甦ったことだったのです。
支部長はそれまでの統率型の支部長ではありませんでした。
一人一人の能力を最大限に引き出せる、自由闊達型の支部長であったのです。
新支部長を迎え2年が過ぎた春、かつて最下位で底辺を支えることに甘んじていた支部は
そのころにはなんと、ベスト3に入っていました。活き活きと活動は益々活発になっていました。
マイナスの思いに対し支部長の話は、さらに熱意が込められていました。
「この長野には何もないですね。何もなく、先生が一度も講演会されてない土地だからこそ、
なおのこと頑張ろうよ。
だって世界には先生が行ってない土地は沢山ある。
先生と御縁があった土地だから一生懸命やったということだけだったら
世界の他の支部の人達は自分たちも頑張ろうと思わないじゃないか。ね。
先生が訪れてないからどうのこうのではなく、先生が訪れたくなるような場所にしようじゃないか。
私達は全国、全世界の模範となるような支部をここにつくろうよ!。
今は何もないからこそ、目標に向けて一生懸命頑張っていることこそ他の地域での希望の光となれるんだよ。
もともと光っているからこそ頑張って当然なのではないんです。
光ってないからこそ光らせることが私たち支部の使命なんです。そのためにこうして生まれ来て集っているんですよ。」
支部長の強い強い熱意に集った人々は次々と誓願をしていきました。
涙をながしながら真剣に誓願をする人が日を重ねるごとに増えていったのです。
私たちはモデル支部を目指しているのです。
人の喜びを喜びとして生きる姿。それこそが我が支部におけるユートピアなのです。
そういう支部が一位でなかったら誰もユートピアを創ろうなんて思わないじゃないか。
もっとも大切なこと、それは、与える愛からはじめること、ちゃっかりおこぼれを頂こうなんて気持ちは奪う愛だ。
与える愛からはじめてそれがどんどん広まっていく。そういう活動をやり遂げるからこそ尊いのです」
男はにっこり笑いながらこういいました。
「感謝で一体になりましょう!!」
「精一杯の感謝を周りに捧げさせていただきましょう。今もてる精一杯の気持ちを皆に差し出させていきましょう。
成果の大小ではなく、一人一人が誠意を込めて全員で捧げさせていただくこと。
一人も知らない人、参加しない人がいないように貴い機会であることをお伝えしていきましょう。
それがこの支部に集った皆さんの誇りでもあるのです。」
男の目には涙がいっぱいたまっていた。
男は、一人一人の顔を確かめるようにして見つめると、一礼した後、去っていった。
安堵感と共に新たなる意欲が満ち満ちてくるのを観じていました。
それからの活動は益々感謝に満ちたものになりました。
活動がきつくなかったかと言えば嘘になるだろう。
しかし、一人一人の心は何とも言えない満ち足りた気持ちでいっぱいだったのです。
そして、気がつけば、いつのまにか支部は日本一になっていました。
その年の暮れ、突然に事件が起きました。
なんと、支部一番の人気者支部長の異動の知らせでした。
会場は座る場所もないくらい混みあって、別れを惜しむ人が大勢押し寄せていました。
笑顔と笑いとそして涙の送別会でした。
支部長の最後のお言葉で、「私は支部に集う皆さんに育てていただいた。今度の支部長もどうか育ててほしい」
と締めくくられました。
私たちは知りました。感謝で満ちた行動をしてると、その感謝に満ちた結果が現れてくる事を。
そして支部長が来るまでは為し得なかった奇跡が今ここに現実になったことを。
ドラえもんはのび太が一人立ち出来るように無償の愛を与え続けていましたが、
人気者の支部長は多くの人を愛しつづけ、また多くの人に愛された人でした。
無我なる愛とコツコツが勝つコツと背中で教えてくれた支部長♪
あの存在はきっとエル・カンターレがよこしてくれた天使だったと私は思います。
