2009/09/30

小説「走れメロス」をはじめて知ったときは
外国文学にはさわやかさや清々しさがあるものだなあと思ったものでした。
でも、それが日本人による作品だと知ったときは凄く驚きました。
だって、「走れメロス」にはギリシャの香りがするじゃありませんか
それに、なんといっても相手を信じきる男の友情は感動です。
良い意味で日本文学らしくない作品だと思いました。
こういう作品を残した太宰治のことを青森の人はさぞかし誇りに思っている事でしょう
と考えていたのですが、実際青森に人に訊くと
不思議なことにあんまり反応が良くなかったりしました。
それというのも最後にああいう死に方をしたのが青森に人にとっては嬉しくない事だったようです。
「走れメロス」を書いた背景には借金取りから逃げ惑っていた実体験が元になっているそうで、
そう云われてみれば、彼の生き方は他の模範とは云えないかもしれないですね。
だけど、そんな泥沼のような人生の中で、蓮の花のような作品が一つでもあったという事は
素晴らしい事じゃないでしょうか。
太宰治の他の作品の善し悪しは私には分かりませんが、
「走れメロス」は本当に名作だと私は思います。
男の友情でいえば、
「愛は風の如く」のヘルメスとテーセウスの友情が一番で
メロスとセリヌンティウスは2番目ぐらいに良い!
この「走れメロス」の物語の中でメロスが大変な危機にさらされるところがあります。
そのときメロスはゼウス神に祈ります。
すると奇跡がおこりメロスが助かるわけです。
本人が一生懸命に努力するとき、危機のとき
その時に神は、そば近くにいたわけです。
人の善なる心を信じる大切さ、約束を守る事の大切さ
信じて仰ぎ見る大切さをこの小説は教えてくれる。
今の日本の作家の方もこのような作品を是非書いてほしいと
心から願っています。
写真:五所川原方面から見た津軽富士(岩木山)
斜陽館
万茶ン(太宰が通ったとされる東北初の喫茶店)